7.182017
わんちゃんの皮膚には色々なできものができます。
10歳を超えると、1個くらい皮膚にできものが見つかるのではないでしょうか。
「できもの」も良性のものから、悪性のものまで様々です。
やっかいな事に見た目では、良性悪性はしっかり区別できない事がほとんどです。
他院で「見た目が良性っぽいので様子を見ましょう」
と言われて手遅れになった悪性腫瘍は数えきれないほどあります。
その時の飼い主様の後悔は想像に難くありません。
今日は「これは腫瘍なのか」すら気づかれにくい腫瘍、『肥満細胞腫』のお話です。
この子は中齢のパグで非常にフレンドリーです。
人がいればとにかく嬉しくて、常にしっぽをフリフリです。
そんな可愛いパグさんですが、「腕がブヨブヨしている」
「なんか虫にでも刺されたのかな」、「でも数日しても全然ひかない」ということで来院です。
確かに触診してみるとブヨブヨしています。
触っているとうっすら赤くなってきます。
『ん?これはきっと腫瘍ですね』
それを確かめるために細胞診に進みます。
やっぱり…紫色の顆粒を持った細胞ばかりです。
『肥満細胞腫』です。
人間ではほぼできない腫瘍なので、聞き慣れないかもしれません。
名前は「肥満」ですが太っているかは関係ありません。
悪性の腫瘍です。
ブヨブヨは実は悪性腫瘍だったんですね。
細胞の中の紫色の顆粒の中には、色々な物質が詰まっています。
血を固まりにくくする「ヘパリン」
血管を広げ、低血圧起す「ヒスタミン」
傷の治りを妨げる「蛋白分解酵素」
などなど、いろいろ詰め込んだまさに爆弾です。
触診で赤くなったのも、触った刺激で爆弾がはじけたんですね。
この子はレントゲンや血液検査、エコーなどで転移を調べて手術になりました。
皮膚の下で広がりやすい腫瘍ですので、可能な限り大きく切除します。
内側が腫瘍のラインで、そこから2センチ程度の余裕をもって切ります。
小さな丸は脇のリンパ節があるであろう場所です。
悪性腫瘍は1回目の手術で大きく切除できるかで、再発率が大きく違います。
ただし、できた場所が腕で大きく切除しにくい…
大きく取ると皮膚が足りなくなり縫合できないのです。
ここで妥協すると、再発するので方法を考えます。
今回は脇の下の皮膚を腕に移植することにしました。
予定通りの位置で切除して、筋膜も一枚切除します。
(深さ方向のマージン2センチは絶対にとれないので、筋肉の膜を切除する事で同じくらいの効果があります)
脇の下の皮膚を移動させて縫合します。
2週間後には抜糸もすみきれいについています。
毛が生えれば傷口もわからなくなります。
手術後の病理検査でもすべて腫瘍は取りきれていました。
もし飼い主様が腕のブヨブヨをあと1ヶ月様子をみていたら、
断脚手術になっていたかもしれません。
パグの肥満細胞腫は良いものが多いですが、今回のように悪いものも含まれています。
なにか体の表面にできものや、変な病変があるときはなるべく早くご相談ください。
ちょっとおかしいかな位で病院でみてもらって、「何でもありませんでした」が一番いい事だと思います。
LINEでブログの更新などをお知らせしています。よろしければご登録ください。
岐阜県岐阜市柳津町4−17−1 はづき動物病院
この記事へのトラックバックはありません。
Copyright © はづき動物病院 All rights reserved.
この記事へのコメントはありません。